Little Tales Hidden Within a Jeweliss’s Brooch
それは、ジュエリスのブローチに秘められた小さな物語。
陽だまり色の果実
なだらかな丘のふもとに、
赤い屋根の農家と小さな納屋が点在するオレンジ園がありました。
春になると白い花が咲き、夏には濃い緑の葉が風に揺れます。
そして夏が終わりに近づくころになると、
木々には太陽を閉じ込めたような美しいオレンジ色の果実が実り始めました。
そのオレンジ園を守る女性の名前はソレーヌ。
やわらかな栗色のボブヘアに琥珀色の瞳を持つソレーヌは、
毎朝日の出とともに園へ向かい、一つひとつの木に声をかけるのが日課でした。
ある年の夏の終わり、長く雨が続きました。
空は灰色の雲に覆われ、オレンジ園の木々もどこか元気をなくしているようでした。
「今年の実は、ちゃんと色づくかしら。」
ソレーヌは心配そうに空を見上げました。
けれど、オレンジ園の一番奥にある古い木だけは違いました。
その木には、ひときわ鮮やかな果実が一つだけ実っていたのです。
雨の日も、風の日も、その果実はまるで小さな太陽のように明るく輝いていました。

不思議に思ったソレーヌが近づくと、葉の間から柔らかな光がこぼれます。
すると風がそっと吹き抜け、果実は小さく揺れました。
その瞬間、オレンジ色の光が空へ舞い上がり、園いっぱいに広がったのです。
光は濡れた葉を照らし、木々の間を抜け、赤い屋根の農家や納屋を優しく包みました。
そして遠くに見える畑や牧草地まで、陽だまり色の輝きで満たしていきます。
すると不思議なことに、曇っていた空の雲が少しずつ薄くなり始めました。
農家の人々は手を止め、外へ出て空を見上げました。
誰もが胸の奥に温かな気持ちが広がるのを感じていました。
それからしばらくして。
空には美しい青空が戻り、
その後オレンジたちは太陽の光を受けながら、少しずつ鮮やかな色へと染まっていきました。

その様子を見たソレーヌは微笑みました。
「あなたがみんなに勇気を分けてくれたのね。」
すると風が吹き、木々の葉がさらさらと音を立てました。
まるで返事をするように。
それ以来、その丘のオレンジ園には、
希望を実らせる果実が育つという言い伝えが残るようになりました。
そして今も風が吹くたび、
その丘のオレンジ園には陽だまり色の光が揺れるといわれています。
それはきっと、誰かの心に希望を届けた果実たちの名残なのです。
太陽の恵みをたっぷりと宿した小さな果実が、今日という一日に温かな幸運を届けてくれるでしょう。
