Little Tales Hidden Within a Jeweliss’s Brooch
それは、ジュエリスのブローチに秘められた小さな物語。
ルビーの瞳が見つけたもの
雨上がりの朝、森はまるで洗いたての宝石箱のように輝いていました。
やわらかな朝日が木々の隙間から差し込み、葉の先には丸い雫がいくつも揺れています。
小さな池の水面には空の青が映り、
時折ぽちゃんと雫が落ちるたび、小さな波紋が幾重にも広がります。
風が吹くたび、水面に浮かぶ睡蓮の葉はゆらりと静かに揺れました。
白い小花が咲く草むらでは、朝露が真珠のようにきらめいています。
その池のほとりに、カエルのクロエルは住んでいました。
クロエルは少し特別なカエルです。
ふっくらとした身体には、朝露を閉じ込めたようなクリスタルの光が無数に輝き、
赤い瞳はルビーのように澄んでいました。
このクリスタルは、ずっと昔に森の妖精たちから授かった贈りもの。
「誰かを幸せにしたとき、この光はもっと美しく輝くでしょう。」
妖精たちはそう言い残して、風の中へ消えていったといわれています。
それ以来クロエルは、森のみんなの小さな困りごとを見つけては、
ぴょんぴょん跳ねながら助けていました。
その朝も、クロエルは空を見上げながらつぶやきます。
「今日は何か、素敵なことが起こりそう。」
すると、木陰から小さなすすり泣きが聞こえてきました。

クロエルが近づくと、一羽の小鳥がしょんぼりとうつむいていました。
羽はきれいな淡いブラウン色ですが、元気がありません。
「どうしたの?」
小鳥は涙で濡れた声で、そっと答えました。
「おばあちゃんに届けるはずだった、大切な赤い実を落としてしまったんだ…」
その赤い実は、森の奥に年に一度だけ実る特別な木の実で、食べると元気が湧くといわれていました。
クロエルはすぐに言いました。
「いっしょに探そう!」
二人は森じゅうを探し始めました。
草むらをのぞき込み、白い花の間をくぐり、苔むした石の下まで確認します。
池のまわりも何度も探しましたが、なかなか見つかりません。
小鳥の声は少しずつ小さくなっていきました。
「もう…見つからないかもしれない…」
その瞬間でした。
クロエルの赤い瞳が、朝日を受けてキラリと光ります。
葉っぱの陰に、ほんの小さな赤い光が見えたのです。
クロエルは大きく跳ねました。
「——あったよ!」
そこには、朝露をまとって宝石のように輝く赤い実がありました。
小鳥は目を丸くしたあと、ぱっと笑顔になりました。
「クロエル、ありがとう!」
羽を大きく広げて喜ぶ小鳥を見た瞬間、
クロエルの身体を覆うクリスタルが、今までで一番まばゆく輝き始めました。

白い光はやがて、ほんのり銀色とルビー色を帯びながら池を満たし、
森じゅうに優しい光を広げました。葉も花も水面も、その光を受けて静かに輝きました。
クロエルはそのとき、妖精たちの言葉の意味を知りました。
幸せは、自分だけのものではない。
誰かに渡したとき、もっと大きく、美しく育っていくものなのだと。
それからもクロエルは、森のどこかで小さな幸運を探して、今日もぴょんぴょん跳ねています。
幸せは、案外すぐそばにあるもの。
そして今日もどこかで、カエルのクロエルが、誰かのもとへ小さな幸運をそっと運んでいるのです。
