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アルシェが見つけた小さな幸せ 【完全版】

ジュエリスのブローチに隠された小さな物語 アルシェの小さな幸せ 完全版
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それはジュエリスのブローチに隠された小さな物語。

パリの古い石畳の路地裏に、深い海のような青い瞳と
陽だまりのように金色に輝く毛並みを持つ小さな猫が住んでいました。
その名はアルシェ。
額には幸運のしるしといわれるピンクルビーの宝石が輝いています。

ある秋の朝、アルシェはいつものように街を散歩していました。
パン屋からは焼きたてのパンの香りが漂い、
広場の噴水のそばでは、人々が思い思いに本を読み、
朝日を受けた噴水の水面はきらきらと輝いていました。

そんな中、古い本屋の前でアルシェはふと足を止めました。
店の主人であるムッシュ・ベルナールが、珍しく肩を落としていたのです。
「どうしたの?」

そう尋ねるようにアルシェが見上げると、ベルナールは小さくため息をつきました。
「亡くなった妻が私に贈ってくれた大切な四つ葉のクローバーのしおりをなくしてしまったんだ。」

そのしおりは、何十年も前の結婚記念日に妻から贈られた、かけがえのない宝物でした。

本を開くたび、四つ葉のクローバーのしおりは
妻と過ごした幸せな日々をそっと連れてきてくれました。
それはベルナールにとって、愛する人との思い出を結ぶ特別な宝物だったのです。

アルシェは青い瞳をきらりと光らせると、街中を探し始めました。
本屋の棚の隙間、パン屋の前、噴水のそばのベンチの下――。
思いつく場所をひとつひとつ探してみましたが、
しおりはどこを探しても、一向に見つかりません。

夕暮れの光が街を琥珀色に染めるころ、
アルシェは街路樹の枝先で小さく揺れる緑の影を見つけました。

それは風に運ばれた四つ葉のクローバーのしおりでした。
アルシェはひらりと枝へ飛び乗り、大切な宝物を抱くようにそっとしおりをくわえると、
ベルナールの待つ本屋へ向かったのです。

「まさか……!」
ベルナールは目を見開き、そっとしおりを受け取りました。
そこには長い年月を経ても色あせない妻の文字が残されていました。

『あなたと過ごす毎日が、私の一番の幸せです。』

見慣れたはずの文字なのに、その言葉にはあの日と変わらない温もりが宿っていました。

アルシェからしおりを受け取ったムッシュ・ベルナールは、
そっと四つ葉のクローバーに触れました。
その瞬間、胸の奥にしまっていた思い出が静かによみがえりました。

朝露が花びらを伝うように、ベルナールの瞳から一筋の涙が静かにこぼれました。
けれどそれは悲しみではありません。

妻と過ごした幸せな日々が、ひとつ、またひとつと
心に灯ったことで生まれた、懐かしく温かな涙でした。

やがて、その顔には久しぶりに穏やかな笑みが戻りました。
それは街の誰もが親しんできた、あの優しい笑顔でした。

久しぶりにムッシュ・ベルナールの笑顔が戻ると、
街にはどこか優しい空気が流れはじめました。

その日から人々はこう噂するようになりました。
「青い瞳のアルシェに出会えた日は、きっと小さな幸せが見つかる。」

そして今日もアルシェは、誰かの大切なものと幸せな記憶を結ぶため、
パリの街のどこかを静かに歩いているのです。

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